profile

小峰正史
職 氏名教授 小峰 正史 (KOMINE Masashi)
学位博士(農学)
所属秋田県立大学
生物資源科学部 生物生産科学科
植物資源創成システム研究室
アドレス010-0194 秋田県秋田市下新城中野字街道端西241-438
秋田県立大学 秋田キャンパス 学部棟III F224
TEL 018-872-1647 / FAX 018-872-1678
生年月日1966年9月13日
出身地東京都
学歴1990年3月東京大学農学部卒
1990年4月東京大学農学系研究科大学院修士課程入学
1992年3月  同  修士課程修了
1992年3月  同  博士課程進学
1997年3月東京大学農学生命科学研究科大学院博士課程修了
学位論文「CELSSの酸素再生システムにおけるスピルリナの利用に関する研究」 学位:博士(農学)
職歴1994年11月茨城県機械工学流動研究員採用 茨城県農業総合センター園芸研究所勤務
1997年4月科学技術振興事業団常勤客員研究員採用 農林水産省農業環境技術研究所勤務
1999年4月秋田県立大学勤務

研究テーマ

  1. 植物工場における薬用植物栽培技術の開発

    植物工場は日本では1970年代から研究が始まり,現在では全国で約300ヶ所の植物工場が稼働している。植物の成育に影響を及ぼす,光,温度,湿度,ガス環境などを人工的に創り出し,一年間を通して高品質の作物を促成的に生産することができる。また,気密性の高い栽培室を有するために,病害虫の発生がないために農薬を使う必要がなく,組織培養によって創り出したウイルスフリー,無菌の苗を使えば無菌の野菜をつくることもできるなど,非常に優れた栽培施設である。

    一方で,植物工場は構築するための建設コスト,運転するためのランニングコストが非常に高い。さらに,人工光源を用いた植物工場では光強度の関係から,葉菜類の栽培が中心となり,販売価格を低く抑えると利益が得られず,コストの償却ができないという,産業として致命的な欠陥を持つ。対策としては,コストの低減と付加価値の高い植物の生産などが考えられ,我々は高付加価値植物の一つとして薬用植物に着目した。

    薬用植物は様々な疾病に効果を持つ薬効成分を産生する植物の総称である。従来は一部を除いて栽培は行われておらず,特に漢方薬(和漢薬)の原料となる生薬は日本の消費量の約90%が輸入に依存している。しかし,生産国の状況や,遺伝資源の移入に関する国際条約の発効という情勢から,薬用植物の国産化が必要とされている。しかし,日本で用いられる薬用植物の多くが既に国内で栽培されているにも関わらず,輸入依存率が高いのは,国産生薬は薬効成分含有量の基準を満たせないためである。日本の自然環境化では,薬効成分の産生が促進されない種が多く,従ってそれぞれの薬用植物にあった栽培環境を整える必要がある。そこで,植物工場の様に任意の環境条件を作り出せる栽培施設を活用することで,基準を満たす高品質な薬用植物の生産が可能になる。

    我々は,高品質な薬用植物の国産化推進に植物工場を活用することを目的に,様々な薬用植物を対象に,(1) 成長に適した栽培環境の探索,(2) 薬効成分の産生に適した栽培環境の対策の二つを目的とし,研究を行っている。

  2. 施設栽培における地中熱ヒートポンプシステムの利用に関する研究

    植物工場のランニングコストが高くなる要因の一つに,空気調和(空調)のためのエネルギーコストがある。冷暖房にかかるコストを低減することにより,ランニングコストの低減が図れる。また,秋田県は農業体系の変革の一環として,施設栽培による周年栽培の拡大を進めている。しかし,秋田県に限らず,ビニルハウス等の施設栽培において,冬期夜間の暖房コストは非常に大きく,農家の経営を圧迫している。これらのことから,比較的安価に導入可能で,エネルギーコストの低い新しい空調装置の開発が望まれている。

    ビニルハウス等の栽培施設の主要な暖房方式は,重油の燃焼熱による暖房である。これに対し,新しい暖房方式として自然エネルギーの地中熱が考えられる。地熱はある深さ以上になると年間を通してほぼ一定であり,夏期では気温より低く,冬期では高くなる。したがって地中熱は夏期,冬期ともに利用可能な熱源である。特に地下水が豊富な地域では熱効率が高く,さらに温泉が湧く地域ではより効率的な温熱限として利用できる。地中熱を利用する方法は様々があるが,そのひとつに地中熱ヒートポンプシステムがある。ヒートポンプとは,エネルギーを投入して,温度の低い熱源から温度の高い熱源へ熱を移動させる装置のことで,家庭用の空調機器(冷房・暖房)に用いられている。熱力学上自然に起こりうる移動と逆方向の熱移動になるため,一般的なヒートポンプは多くのエネルギーを必要とするが,地中熱ヒートポンプの場合は自然な高温熱源から低温熱源への熱移動になるので,大きなエネルギーを必要とせず,運転コストを低く抑えることができる。

    一方で,広く用いられる地中熱ヒートポンプは50~100m程度の採熱井を使うため,ボーリング作業のために設置コストが高くなり,農家のビニルハウスへの導入は難しい。我々は,採熱効率は低下するが敷設コストを低く抑えることができる,比較的浅い地中から採熱する浅層地中熱ヒートポンプシステムをビニルハウスの冷暖房に使用することを目指し,その有効性を検証することを目的とした実証試験を行っている。